RESEARCH
がんリハチーム
運動器チーム
現在、運動器チームでは主に3つのテーマを軸に研究を進めています。
一つ目は、地域在住高齢者の加齢による身体・認知機能低下に関与する要因の探索です。高齢者が増加している現代において、加齢による身体・認知機能低下を予防することは重要な課題です。中でもその典型的なものが、サルコペニアやフレイル、そして認知症です。
フレイルとサルコペニアは重複する項目が多く、可逆的な加齢変化であると考えられており、予防または早期発見による対応が非常に重要になっています。また身体機能の低下だけではなく、認知機能の低下にも直接的・間接的に関与することが多くの研究で指摘されていることから、我々は上記に焦点を当て愛知県東郷町における地域在住高齢者に対する健診事業を行なっています。この検診による前向きな検証により運動機能や運動・生活習慣と、これらの病態および認知機能の因果的な関係を検証していくことが必要と考え、本研究に取り組んでいます。また、近年は新型コロナウイルスの流行により、生活様式が変化するとともに身体活動の減少が懸念されており、これによる身体機能、認知機能などへの影響についても今後検討をしていきたいと考えています。
二つ目は、近赤外分光法(Near – infrared spectroscopy: NIRS)を用いた骨格筋における筋酸素動態の探索です。NIRSは血中のヘモグロビンや酸化ヘモグロビン、ならびに筋内のミオグロビンや酸化ミオグロビンの検出が可能であり、それぞれの変化を定量化できます。これらの検出された項目から算出される骨格筋の筋酸素飽和度 (Muscle oxygen saturation: SmO2)を用いることで筋疲労や筋の有酸素能力、エネルギー代謝を評価することが可能となります。しかし、NIRSの先行研究は少なく、動作に伴う反応および各筋におけるSmO2変化の反応の違いは明らかではないことから、現在は健常若年者(大学生や大学院生)を対象とした単関節運動や歩行(6分間歩行試験)などの動作に伴う反応を調査することで、個々の筋における反応の違い、ならびに身体組成や運動機能との関連性について調査を行なっています。健常若年者での反応が明らかとなれば、今後は高齢者や有疾患者での検討にもつなげていくことができると考えています。
三つ目は、関節リウマチ患者のフレイル予防に向けた前向き観察研究です。本研究は名古屋大学医学部附属病院整形外科リウマチ班との共同研究として取り組んでいます。近年高齢者の人口の割合が増加していますが、リウマチ患者でも同様に高齢者の割合が増加しており、通常よりも早い段階からフレイルに陥り要介護状態になりやすいと考えられています。そのため、リウマチ患者に対する介護予防対策の検討が早急の課題であり、有効な対策を立てるための実態調査が求められる中で、リウマチ患者の経時的変化は不明な点も多いです。そこで、リウマチ患者のフレイルや関連の深いサルコペニア、ロコモティブシンドロームの割合や身体機能、動作能力の加齢変化による特徴を明らかにするため、2021年より調査を開始し、データ収集を進めています。
私どものチームでは消化器がん患者と血液腫瘍患者を対象とした研究を実施しております。
消化器がん患者を対象とした研究は、社会医療法人愛生会総合上飯田第一病院と共同して、手術予定である大腸がん・胃がん患者を対象に術前の身体活動指標と術後合併症や術後の身体機能回復などの術後アウトカムとの関連を中心に解析しています。術前の身体活動指標と術後合併症、術後身体機能回復との関連に関する研究結果は国際誌にて報告しています。今後も対象者リクルートを継続し、様々な視点でデータを解析していく予定です。
血液腫瘍患者を対象とした研究は、名古屋第一赤十字病院と共同して、同種造血幹細胞移植患者を対象に超音波を用いた骨格筋評価や身体機能の調査を行っています。こちらの研究はこれから対象者リクルートを開始し、研究を進めていく段階です。
小児チーム
愛知県三河青い鳥医療療育センターとの共同研究で、三次元動作解析装置VICONを用いた臨床バイオメカニクスの研究を行っています。
主にセンターでの三次元動作解析を行った患者を対象に研究を進めています。
また、岡崎市医師会および教育委員会の後援のもと、岡崎市児童運動器検診を実施し、定型発達児の歩行および身体機能について調査しています。
整形チーム
藤田 玲美(博士後期課程2年)
研究題目:糖尿病が併存する人工膝関節全置換術後患者の長期経過と最適な介入方法の効果検証
研究内容:変形性膝関節症(膝OA)と糖尿病は互いの疾患のリスクを高めます.末期膝OA患者において,症状が軽減しない場合には人工膝関節全置換術 (TKA) 等の手術の適応となります.TKAは身体機能・身体活動量の向上にも有効であるといわれていますが,糖尿病が併存するTKA患者を対象にTKA前後で各指標を比較した研究では,身体機能,質問紙上の身体活動量は向上したが糖尿病指標は変化しなかったと報告されています.本研究では糖尿病が併存するTKA後患者に対する効果的な介入を検討するために,TKA後の身体活動量・糖尿病指標等を長期間調査して,糖尿病の改善に関連する項目を検討し,申請者提案の運動介入方法の効果検証を行います.
参照URL:https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19749/
竹内 知陽(博士後期課程1年)
研究題目:二分脊椎児の足部機能に影響を及ぼす要因と理学療法介入効果の検討
研究内容:幼児期までに二分脊椎の診断を受けた児を対象に,周術期における運動能の評価,足部機能と脊髄病変との関連,装具療法の要否に関する指標について,理学療法の視点で臨床研究を行います.